小売店のホームページ・ネットショップの始め方 ─ 実店舗の強みを活かす
開店の時点で全商品を載せる必要はありません。まず売る10〜30点の選び方、在庫の売り違いを防ぐ方法、利益を守る送料設計、返品の条件の書き方と酒・食品の手続き、店頭のQRコードからの案内まで、開店の手順をまとめました。

常連のお客様に「ネットで買えないの?」と聞かれた、催事の後に遠方から問い合わせが来た。実店舗を構える小売店がネットショップを考え始めるのは、そうした声がきっかけになることがあります。届けたい相手が、もう目の前にいる状態です。
始めるときに迷うのは、全部の商品を載せるのか、店頭と在庫をどう合わせるのか、送料をいくらにするのか、といった点です。この記事では、小売店がネットショップを始める手順を「何から売るか」「在庫連携」「送料」「返品と表示の決まり」「店頭のお客様の案内」の順に説明します。
小売店がネットショップを持つ意味
ネット専業の店が最初に苦労する「誰にも知られていない」という壁が、実店舗のあるお店にはありません。スタート地点が違います。
実店舗が最初から持っている 3 つの資産
- すでにお客様がいる ── 店頭に来てくれる常連のお客様は、最初のお客様候補です
- 商品への信頼がある ── 「あのお店が選んだ物」という信頼は、無名のネットショップには無いものです
- 商圏の外に売れる ── 引っ越した常連のお客様、催事で出会った遠方のお客様、ギフトの贈り先。店の商圏を超えた売上の入口になります
目的の順番
目的は「ネットで新規客を開拓する」ことより先に、今あるお店の信頼を、通える範囲の外まで届けることです。この順番で考えると、まだ知らない人に向けた品揃えではなく、すでに知ってくれている人が欲しがる物から並べればよい、と決まります。

まず何から売るか ─ 全部載せない
開店の時点で全商品を並べる必要はありません。商品登録は 1 点ごとに写真・説明文・価格・在庫の入力が要り、点数が多いほど開店が遅れます。店番をしながらの作業なので、開店の日が決まらないまま登録だけが続く状態になりがちです。
最初に載せる 10〜30 点の選び方
| 選ぶ条件 | 向いている理由 |
|---|---|
| 店頭で「ネットで買えないの?」と聞かれたことがある | 欲しい人がいると分かっている |
| 手土産・ギフトに使われている | 遠方への発送と相性が良い |
| 自店のオリジナル・仕入れ先が限られる | 価格で比べられにくい |
| 常温で送りやすく、壊れにくい | 梱包と配送の負担が軽い |
条件が重なっている商品ほど向いています。品揃えの広さは店頭の強み、選んだ看板商品はネットの強みと考えて、まず絞った品数で開店し、売れ行きと作業量を見ながら足していきます。
商品を足していく順番
- 注文が入った商品と一緒に買われやすい物から足す
- 「これはありますか」と聞かれた物を控えておき、まとめて登録する
- 写真の撮り方や説明文の型が固まってから、点数を増やす
最初の 10 点は型づくりの時間です。型が決まると、登録の手間は軽くなります。説明文の型づくりは 原稿の書き方 が参考になります。
実店舗との在庫連携をどうするか
店頭で売れた商品がネットでも注文されてしまう「売り違い」は、お詫びとキャンセルの対応が要り、お客様の信頼を削ります。対策には、運用でまかなう方法と、仕組みで解決する方法があります。

3 つの方法
| 方法 | やり方 | 向いているお店 |
|---|---|---|
| 在庫を分ける | ネット用の在庫をあらかじめ取り置く | 品数が少ない、始めたばかり |
| 運用で合わせる | 店頭で売れたら、閉店時にネットの在庫を手で直す | 1 日の販売点数が少ない |
| POS レジと連携する | POS とネットショップの在庫を自動で合わせる | 品数・販売数が多い |
始めたばかりの段階では、ネット用の取り置きがいちばん確実で簡単です。販売数が増えてきたら、お使いの POS レジ(お会計と売上の記録をまとめて行う機械)と連携できるネットショップのサービスへの移行を考えます。
サービスごとの料金と違いは Shopify・BASE・STORES比較 にまとめています。
送料設計で失敗しない
送料は、周りの店に合わせて決めるのではなく、1 注文あたりの実費を出してから決めます。
送料を決める 3 ステップ
- 実費を知る ── 使う配送方法(宅配便・コンパクトな箱の便・ポスト投函など)の運賃と、梱包材の単価を出します
- 地域別か全国一律かを決める ── 北海道から送る場合、道内あてと本州・九州・沖縄あてでは運賃が変わります。配送会社の運賃表で、主な送り先の地域ごとの金額を出し、一律にするなら平均で吸収できる金額にします
- 「◯◯円以上で送料無料」のラインを客単価から決める ── 平均の客単価より少し上に置くと、「あと 1 点」の追加購入のきっかけになります

決めた後も見直す
- 実際の注文で 1 件あたりいくら残ったかを、数か月に一度は見る
- 運賃が改定されたら、無料ラインも合わせて見直す
- 重い商品・かさばる商品だけ別料金にする方法もある
開業から集客までの全体の流れは ネットショップ開業の流れと費用 にまとめています。
商品ページに「店頭で話していること」を書く
店頭でお客様に話していることを、そのまま商品ページに書けるのは、実店舗のあるお店ならではです。
店頭の会話を、ページの部品に置き換える
| 店頭でしていること | 商品ページに置くもの |
|---|---|
| 「これは◯◯に合いますよ」とすすめる | スタッフのおすすめの一言と、使う場面 |
| 手に取って大きさを見てもらう | 手に持った写真、よく知られた物と並べた写真 |
| 「ギフトですか?」と聞いて包む | 包装・のし・メッセージカードの選択肢 |
| 「前に買った◯◯の続きです」と話す | 同じシリーズ・一緒に買われている商品への案内 |
大きさの伝わる写真は、スマートフォンで撮れます。撮り方のコツは ホームページの写真はスマホで十分? で説明しています。
ギフトの注文で聞かれることに先に答える
手土産・ギフトとして買われる商品は、注文の前に聞かれることがほぼ決まっています。商品ページかご利用案内のページで、先に答えておきます。
- 包装やのしに対応しているか。表書きや名入れはどこまでできるか
- メッセージカードを入れられるか
- 贈り先に直接送るとき、金額の分かる書類を同封しないか
- 届け日の指定ができるか、どのくらい先まで指定できるか
返品・交換のルールと、表示の決まり
店頭ではその場で相談して決めていた返品や交換も、ネットでは先に書いておきます。書いていないと、お客様は注文をためらい、お店は一件ごとに判断に迷います。
書いておくこと
- お客様の都合での返品を受けるかどうか。受けるなら、その条件と期限
- 届いた商品に傷や間違いがあったときの連絡先と、交換の流れ
- 返送の送料をどちらが負担するか
- ネットで買った物を、店頭で交換・返品できるかどうか
最後の一つは、実店舗のあるお店だけが用意できる安心材料です。
酒や食品を売るときの許可・届出
店頭で売れている商品でも、ネットで売るときに別の手続きが要る場合があります。
- 酒類 ── ネットで 2 都道府県以上の消費者に売るには「通信販売酒類小売業免許」が要り、売れる酒の範囲も限られます。店頭用の免許とは別です(国税庁「通信販売酒類小売業免許審査項目一覧表」)
- 食品 ── 包装された食品の販売は営業届出が要るのが基本で、常温で長く保存できる包装食品だけなら届出も要りません。調理・製造などは営業許可です(厚生労働省「営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し」)。管轄の保健所で確かめます
店頭のお客様をオンラインに繋ぐ
開店直後のネットショップに、検索や SNS からお客様が来ることはほとんどありません。毎日会っているお客様に知らせるのが近道です。
店頭にある 4 つの接点
| 接点 | やること | 効きやすい場面 |
|---|---|---|
| レジ横・商品棚 | QR コードを置き、「ネットでもお求めいただけます」と一言添える | 会計の待ち時間 |
| 買い物袋 | ショップカードを入れる | ギフトで受け取った人からの注文 |
| LINE 公式アカウント・メール | 再入荷や季節商品の案内を送る | 来店の間隔が空いたとき |
| 店頭受け取り | ネットで注文して店で受け取る選択肢を用意する | 送料を払いたくない近所のお客様 |
店頭受け取りは送料が掛からず、来店のきっかけにもなります。LINE 公式アカウントの使い方は LINE公式アカウントとホームページの連携 にまとめています。

店頭とネットを競わせない
ネットショップは店の売上を奪う相手ではなく、閉店後や遠方でもお客様がお店と付き合い続けられる窓口です。店頭のスタッフに案内を頼むときも、「ネットに売上を取られる」ではなく「お客様との付き合いが続く」と伝えると協力を得やすくなります。
同じ流れで、店頭のお客様に Google マップの口コミをお願いする方法もあります。頼み方と返信の書き方は Googleマップの口コミの増やし方 にまとめています。
費用感の目安
始め方によって、自分で手を動かす量と費用が変わります。
| 始め方 | 費用 | 向いている段階 |
|---|---|---|
| BASE・STORES の無料プランを自分で使う | 月額 0円。決済手数料はカード払いで 5.5%(STORES)〜6.6%+1件40円(BASE)(2026年10月時点) | まず 10〜30 点で試したい |
| デザインや商品ページの作り込みを頼む | 依頼先と作業の範囲で変わる | 店の世界観をそのまま出したい |
| Shopify などで構築を頼む | 依頼先と作業の範囲で変わる。別に月額(Shopify Basic は年払い 1か月 3,650円) | 在庫連携や機能の追加まで見込む |
上の段から順に、自分で手を動かす量が減り、費用が上がります。どの段から始めても、後から上に移れます。Shopify で作る場合の内訳と見積もりの見方は Shopifyでネットショップを作る費用、依頼先の見極めは 制作会社の選び方、紹介用のホームページの費用は ホームページ制作の費用相場 をご覧ください。
まとめ ─ 小さく始めて、店の信頼を遠くまで届ける
開店の前に、次の点を確かめてください。
- 最初に載せる 10〜30 点を選んだか
- 在庫の分け方(取り置き・手で直す・POS 連携)を決めたか
- 主な送り先ごとの送料の実費を出し、無料ラインを決めたか
- 返品の条件を決め、ご利用案内・特定商取引法の表記・最終確認画面に出したか
- 酒や食品を扱うなら、免許・許可・届出を窓口で確かめたか
- 店頭の QR コード・ショップカード・LINE で、ネットショップを知らせる準備をしたか
LIT STUDIO では、Shopify でのネットショップ構築を 398,000円〜、お店の紹介用のホームページを 50,000円〜(5ページまで)で承っています。小売店向けのご案内は 小売店・ネットショップ向けのページ、料金の内訳は 料金ページ に載せています。
よくある質問
Q.ネットショップはどのサービスで作ればいいですか?
Q.店頭とネットで在庫が合わなくなりませんか?
Q.送料は無料にしたほうが売れますか?
Q.開店しても注文が入りません。何から始めればいいですか?
Q.ネットショップで返品を受けない場合でも、何か書く必要はありますか?
Q.店で売っているお酒や食品を、そのままネットで売れますか?
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