TAMARI-玉理論 · Journal · 2026-05-15
撞点が同じでも入らないときがあるよねって話 — v2 で的球とスロウを足した
タグ: ビリヤード · 厚み · スロウ · 物理シミュレーション · TAMARI-玉理論
v1 は手玉 1 個だけのデモだった。撞点を変えると手玉がどう動くか、は見えるようになったんだけど、ビリヤードって結局は的球を入れる遊びだから、的球が入ってこないと話が始まらないよね。
ということで v2 では的球を 1 個追加して、撞点 × 厚み × スピードで的球がどう動くかを見れるようにした。
→ 撞点 × 厚み → スロウ v2 を試す
同じ撞点・同じ厚みでも入らないときがある
球場でよくあるやつ。「今のと同じ撞点で同じ厚みなんだけどな」と思ってるのに、的球がポケットからズレて出ていく。
これを「ついてない」で片付けるんじゃなくて、なんでそうなるかを説明できるようになりたいなと思って、v2 を作った。
答えを先に言うと、スロウ (throw) という現象が原因になっていることが多い。撞点で回転を入れた手玉や、厚みのあるカットショットでは、的球が「狙ったライン」からズレて出てくる。これは物理的に決まってるズレで、運の問題じゃない。
v2 で見えるもの
v2 のデモには 4 つのスライダーがある。
- 撞点 縦 (上撞き/下撞き = 押し/引き)
- 撞点 横 (側スピン)
- 厚み (カット角)
- 初速
撞いた瞬間に的球の進路が 2 本表示される。
- 点線 = 摩擦をゼロに仮定したときの理想ライン
- 実線 = 実際にスロウが乗ったあとの進路
この 2 本のズレが、スロウ角。
側スピンを入れない・厚みも薄くないときは、ほぼ重なる。でも、撞点を横にズラしたり、厚みを浅くしていくと、点線と実線がだんだん離れていく。これがスロウ。
v1 を作っているときに出てきた式
v1 を作るときに「撞点と回転の関係って何で決まるんだろう」というのを調べたら、剛体球の角運動量の話に行き当たった。
ω = 5hv / (2R²)
ω が回転の強さ、h が中心からの撞点距離、v が初速、R が球半径。撞点を高くすれば回転が増えて、初速を上げれば回転も増える、という当たり前のことが式になってる。
v1 ではこれを使って手玉の挙動を出してた。
v2 ではここに「衝突」が加わる。手玉が的球にぶつかると、運動量と回転がどう移っていくか、という別の物理が必要になる。これが「弾性衝突 + 球-球の摩擦」で、後者がスロウを生む。詳しい式の中身はまだ俺自身咀嚼しきれてない部分があるから、これも v3 以降でちゃんと書いていきたい。
今わかってる範囲で書くと、
- 90 度ルール ── 摩擦をゼロにすると、衝突後の手玉と的球の進路はちょうど 90 度離れる
- スロウ ── 球と球の間にも摩擦があるので、その 90 度ルールが少しズレる。これが目に見える形で出てくるのがカットショットや側スピンのとき
くらいの理解で v2 は組んである。
デモで試してほしいこと
1 個目: 撞点をすべてゼロ、厚みだけ動かしてみる
カット角を浅くしていくと、点線と実線が少しずつ離れていく。これが CIT (Cut-Induced Throw)。厚みだけで生まれるスロウ。
2 個目: 厚みをゼロ (フルヒット) にして、撞点 横だけ動かす
これは横の回転だけで的球の進路がズレるパターン。SIT (Spin-Induced Throw)。
3 個目: 厚みと撞点横を組み合わせる
カット方向と同じ向きにスピンを入れるとスロウが増える、逆向きに入れると打ち消されて減る。この「打ち消し」が実戦で「英国式の Gear」と呼ばれるテクニックの原理になってる、というのを記事を書きながら知った。
v2 の限界
v2 はまだ手玉と的球の 1 対 1 の衝突しか扱ってない。クッションも入ってないし、3 球目以降の連鎖もない。
あと衝突後の手玉に残ったスピン (側スピンとか引き玉の戻り) の扱いも、今回はほぼ無視してる。これがあると衝突後の手玉の進路が変わって、ポジションプレイの話になる。v3 はそのあたりを足していけたらいいかなと思う。
物理の中身はまた段階的に
v1 のときと同じで、なぜスロウが起きるかの数式まわりは、俺自身がちゃんと説明できるところまで噛み砕いてから出していく。
今読みたいなと思ってるもの:
- Shepard, R. Amateur Physics for the Amateur Pool Player ── ネットで読める教科書的な PDF
- Marlow, W. C. The Physics of Pocket Billiards (1994) ── 引き続き
- pooltool のドキュメントの衝突モデルの章
読みながら、自分の手の感覚と式の対応がついた順に書いていく。
→ 撞点 × 厚み → スロウ v2 を試す