TAMARI-玉理論 · Journal · 2026-06-19

2 クッション 3 クッションで「貰い捻り」 がどう乗るかを v4 で出した

タグ: ビリヤード · クッション · 貰い捻り · 摩擦 · TAMARI-玉理論

v3 を公開してから、 自分でも何回かデモを動かしてた。 押し玉のフォロー、 引き玉のドロー、 stun shot で 90° ── あのへんはちゃんと出てる感じがあって、 カーブの出方は悪くないなって思った。

ただ、 1 クッションだとどうしても「貰い捻り」 が薄いんだよね。

球場で「貰い捻り (もらいねじり) 」 って言ってるあれ、 経験者は知ってると思うけど、 簡単に言うと クッションを介して側スピンが書き換えられる現象 のこと。 自分は捻ったつもりがクッションで抜けたり、 逆に捻ってないつもりがクッションタッチで貰ったり、 とにかく「ネジ (side spin) が予測と違う」 って状況のことを指してる.

これって 1 クッションでも一応起きてるんだけど、 もうほぼ「ほぼ理想反射」 で済んでしまうから、 デモで見ても「ふーん」 程度。 でも 2 クッション、 3 クッションって食い込んでくると、 反射ごとに side が貰われたり削られたりして、 最終的に手玉がどこに残るかの計算が全然変わってくる. ポジションを 2 クッション通しで取りにいくときの読みって、 結局これの感覚.

ということで v4 では、 最大 5 クッションまで反射するようにして、 反射ごとに side spin がどう変化していくかを物理で出した。

→ 多段クッション × 貰い捻り v4 を試す

v4 で変えたこと

UI 上だと、 下のコントロールに「最大クッション 0-1-2-3-4-5」 のセレクタを追加した。 これを動かすと、 同じスライダー設定でも手玉の最終位置がガラッと変わる.

軌跡の色を反射回数ごとに変えた。 phase 0 (衝突直後) は青、 1 回目反射後は水色、 2 回目反射後は紫、 3 回目以降は桃色。 反射点には黄色いマーカーを置いてるから、 何回クッションに当たったかがひと目で分かる。

中身では、 v3 の buildCueTrajectoryfor ループ化して、 N 回まで反射するように拡張した。 1 回反射の物理 (cushion.ts) はそのまま使い回し。 つまり物理本体は新しくなくて、 「同じ反射ロジックを連続適用すれば多段になる」 という当たり前のことをちゃんと書いただけ。

なぜクッションで side が変わるのか

ここが「貰い捻り」 の物理的な正体。

手玉がクッションに当たる瞬間、 球の接触点 (クッションに触れてる面) には次の 2 つの速度が乗ってる。

この 2 つを足したのが「実際の接触点での滑り速度 v_rel」 で、 クッションは v_rel に逆らう方向に摩擦を効かせる. これは v2 のスロウと同じ構造。

摩擦は球の並進速度の接線成分を変えるだけじゃなく、 球そのものの side spin も変える 。 そして変わる方向は v_rel に依存するから、

これが反射ごとに毎回起きる。 だから 1 回目で reverse がほぼ消えて、 2 回目で逆向きに小さく乗って、 3 回目で... って感じで、 反射が増えるごとに側スピン履歴が「上書き」 されていく。

摩擦でエネルギーがどんどん減る

もう一つ、 多段クッションで効いてくるのが直進エネルギーのロス。

クッションの反発係数 e は文献値で 0.6 〜 0.85 くらい (デモは中央値の 0.75)。 つまり 1 回反射するごとに法線方向の速度が 25% ぐらい削られる。 さらに接線方向にも摩擦でエネルギーが奪われるから、 2 回反射するともう半分以下、 3 回反射するとさらに半分、 という感じでガクッと遅くなる.

v4 で「最大クッション 5」 にして強めに撞いてみると、 後半の反射では手玉がほとんど止まりかけてるのが見える。 これがあるから、 実戦のビリヤードでも「2 クッションでポジション」 までは現実的にコントロールできるけど、 4 クッション 5 クッションは「だいたいこの辺に来てくれたら嬉しい」 ぐらいの精度になっていく。 物理的に必然.

デモで試してほしい 3 つの撞き分け

1 個目: 「最大クッション 0」 と「最大クッション 3」 の比較

同じスライダー値 (例えば 厚み 50°、 初速 4 m/s、 side spin 少し) で、 反射回数だけ 0 と 3 を切り替えてみる。 0 のときに「テーブルの外まで突き抜けるはずだった」 軌跡が、 3 にすると 3 回バウンドして全然違う場所に止まるのが見えるはず.

2 個目: side spin 無しで「貰い捻り」 を観察

撞点 横を完全に 0 にする。 厚み 40〜60°、 初速 4 m/s。 1 回目反射では接線方向の入射速度から side が「貰える」 → 2 回目反射では貰った side が削られる、 という連鎖が起きる。

3 個目: reverse side で 2 クッション

撞点 横を反射方向と逆向きに目一杯 (-40%R くらい) 入れて、 厚み 50°、 初速 4 m/s。 1 回目で reverse が削られて、 2 回目では逆向きに小さく乗ってる、 みたいなことが起きる。 球場の「1 クッションで抜けて 2 クッションで貰った」 ってあの感覚.

まだ近似な部分

正直に書いておく。

このへんは v5 以降の楽しみ. ただ、 「貰い捻り」 と「多段クッションでの摩擦ロス」 の感覚は、 v4 でようやく球場でやってる読みに近いところまで持ってこれた気がする.

参考にしてる文献


→ 多段クッション × 貰い捻り v4 を試す