TAMARI-玉理論 · Journal · 2026-06-22
「真っ直ぐ撞いてるのに入らない」 の正体 ── v5 でデフレクションを出した
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v4 まではクッションの話をずっとやってた。 でも、 そろそろエイミングそのものに踏み込みたいなと思ってた。 B級が A級に上がるとき、 一番効くのはたぶんここだから。
今回 v5 で出したのは デフレクション (squirt) 。 横 (side) を撞いたとき、 手玉が構えた線から逃げて出る、 あれ。
「真っ直ぐ撞いてるのに入らない」 やつ
経験あると思うんだよね。 厚みは合ってる、 撞点も決めた、 真っ直ぐ撞いた、 なのに薄く外す。 「今のは真っ直ぐ撞いたのに」 って思うやつ。
あれの正体の一つが squirt 。 横を撞くと、 手玉はキューを向けた線から ちょっと逃げた方向に出ていく 。 右を撞けば手玉は左に逃げる。 だから狙った通りにキューを出しても、 手玉は狙い線の隣を走ってる。 B級のときの俺はこれを「ついてない」 で片付けてた。 物理だったんだよね。
→ デフレクション (squirt) v5 を試す
v5 で出したもの
画面には線を 2 本出してる。
- 黄色い点線 = 構えた狙い線 (キューを向けた方向)
- 青い実線 = 実際に手玉が出た線
横撞点を入れると、 この 2 本がパカッと開く。 開いた分が squirt 。 下の数値バーに「デフレクション (squirt)」 を出してて、 何度逃げてるか、 的玉の位置で狙い線から何 cm ずれてるか、 が読める。
スライダーには「シャフト先端質量」 を足した。 これがいわゆる ローデフレクション (LD) シャフト の話。
なぜ横を撞くと逃げるのか ── エンドマス
キューの先端には「実効的な重さ」 がある。 これをエンドマス (endmass) って呼ぶ。 横にズレた点で撞くと、 手玉はその撞点まわりに回されると同時に、 先端の重さに押されて 横方向にもちょっと飛び出す 。 この横の飛び出しと前進の比が squirt 角。
式にするとだいたいこう。
tan(θ) ≈ (b / R) × m_e / ( m_e + (2/5)·m )
b= 横撞点のズレ、R= 球の半径m_e= シャフト先端の実効質量 (エンドマス)、m= 球の質量(2/5)·mは球の回転の効きにくさ (慣性モーメント由来)
ここで大事なのは エンドマス m_e が小さいほど squirt 角が小さい ってこと。 LD シャフトっていうのは、 要するに先端を軽く作って $m_e$ を下げて、 逃げる量を減らしてるシャフトのこと。 デモのスライダーを「LD 寄り」 に振ると、 同じ横撞点でも 2 本の線の開きが小さくなる。 これが LD シャフトを使ったときに「捻っても素直に行く」 って感覚の正体。
一番見てほしいのは「速度を変えても角度が変わらない」 こと
ここが今回の肝。
初速のスライダーを 0.5 m/s から 5 m/s までグリグリ動かしてみてほしい。 squirt の角度はほとんど変わらない 。 速い球でも遅い球でも、 同じ横撞点なら同じだけ逃げる。
これが効くのは、 スロウ (v2 でやったやつ) やこの後やるスワーブが 速度で変わる から。 つまり、
- squirt = 速度にほぼ依存しない (撞点とシャフトで決まる)
- スロウ・スワーブ = 速度依存 (遅いほど大きい)
だから「速い球と遅い球で同じ狙いだと入らない」 が起きる。 速度を変えたら、 逃げる量 (squirt) は同じなのに、 寄る量 (スロウ) や戻る量 (スワーブ) が変わるから、 トータルのズレが変わる。 A級が無意識に速度ごとに狙いを変えてるのは、 これを体で覚えてるってこと。 v5 はその片方 (squirt) を、 まず単体で切り出して見せてる。
デモで試してほしい 3 つ
1 個目: 横撞点だけ動かす
縦撞点 0、 厚みは適当、 横撞点を 0 → 目一杯。 黄色の点線と青の実線がどんどん開いていくのが見える。 0 のときは 2 本がピッタリ重なる (= squirt 無し)。
2 個目: 初速をグリグリ動かす
横撞点を目一杯入れたまま、 初速だけ 0.5 ↔ 5.0 で往復。 「デフレクション」 の角度が動かないことを確認してほしい。 これが speed 非依存。
3 個目: シャフト先端質量で LD を体感
横撞点固定で、 シャフト先端質量を「標準寄り」 から「LD 寄り」 へ。 逃げる cm がスッと減る。 高い LD シャフトに買い替えると何が変わるのか、 が数字で出る。
まだ無い部分 (正直に)
- スワーブ (キューを立てて撞いたときのカーブ) はまだ。 実戦だと squirt とスワーブは逆向きに効いて部分的に打ち消し合う。 これを足すのが次の v6。 ピボット長とか「バックハンドイングリッシュ」 の話もそこで。
- 的玉側の補正 (スロウと合わせた総合エイミング) も v6 以降。
- squirt 角の絶対値は、 エンドマスモデルを実測の squirt 角 (強い english で標準シャフト 3〜4°、 LD 2° くらい) に合わせて較正してる。 シャフトの個体差までは入ってない。
ただ、 「真っ直ぐ撞いてるのに逃げる」 と「LD で逃げにくくなる」 と「速度では変わらない」 の 3 つは、 v5 でちゃんと目で見える形になった。 ここが分かると、 撞点を入れたときの狙いの付け方が変わると思う。
参考にしてる文献
- Alciatore, D. (Dr. Dave) のスカッシュ / デフレクション技術資料 (endmass モデル、 ピボット長)
- Shepard, R. Amateur Physics for the Amateur Pool Player
- Marlow, W. C. The Physics of Pocket Billiards (1994)
→ デフレクション (squirt) v5 を試す