TAMARI-玉理論 · Journal · 2026-06-24
逃げる・戻る・寄るを 1 枚に ── v7 で総合エイミングを出した
タグ: ビリヤード · エイミング · デフレクション · スワーブ · スロウ · TAMARI-玉理論
v5 で squirt (手玉が逃げる)、 v6 で swerve (曲がって戻る) を出してきた。 これで「手玉がどこへ届くか」 は見えるようになった。 でもエイミングはそれだけじゃ終わらない。 当たった 的玉 がまっすぐ出ないからだ。 これが スロウ (throw) 。 v7 は、 逃げる・戻る・寄るの 3 つを全部 1 枚に重ねる回。 シリーズ B「エイミングの核心」 の締めになる。
狙いがズレる理由は 3 つ重なってる
横を撞いて手玉を走らせたとき、 素直なゴーストボールの狙いから外れる理由はこの 3 つ。
- ① squirt (デフレクション) ── 手玉が狙い線から逃げて発射される。 速度で変わらない。
- ② swerve (スワーブ) ── 走行中に曲がって戻る。 遅いほど効く。 ①を打ち消す。
- ③ throw (スロウ) ── 当たった的玉が、 球同士の摩擦で理想線から振られる。 これも遅いほど効く。
①と②は「手玉がどこに届くか」 の話。 ③は「届いた手玉に当たった的玉がどっちに出るか」 の話。 別々の段階だけど、 最後は全部 的玉が狙いからどれだけズレたか に効いてくる。 v7 はこの 3 つを的玉の面で足して、 1 本の「総合補正量」 にした。
→ 総合エイミング (squirt + swerve + throw) v7 を試す
スロウも「遅いほど効く」
ここが今回いちばん大事なとこ。 squirt は速度で変わらない。 でも swerve と throw はどっちも遅いほど大きくなる 。
throw が遅いほど効くのは、 球同士がすれる速さが遅いほど摩擦が強く食いつくから。 速い球はツルッと当たって throw が小さい、 遅い球はグッと食いついて throw が大きい。 v7 ではこの「すれる速さで摩擦が変わる」 を入れたから、 初速を動かすと throw の量がちゃんと変わる。 一定の摩擦で計算してた頃は throw が速度で動かなかったんだけど、 そこを実戦の感覚に合わせて直した。
だから遅い球は、 ②の戻りも③の寄りも両方デカくなる。 「ゆっくり撞くと入れにくい」 ってよく言うけど、 これが物理的な中身。 速度を変えると狙いを動かさなきゃいけない量が変わる、 を 1 枚で見せたかった。
v7 で出したもの
画面の線は v6 から増やしてない (もう全部出てる)。 増やしたのは下の数値バー。
- 黄色い点線 = 狙い線
- 青い曲線 = 実際の手玉の線 (①逃げて ②戻る)
- オレンジの点線 = 的玉の理想線 (摩擦なし、 90度ルール)
- オレンジの実線 = 的玉の実際の線 (③スロウ込み)
数値は 5 つ並べた。
- ① squirt ── 手玉の逃げ。 速度非依存
- ② swerve → 正味 ── 戻りを差し引いた手玉の正味のズレ
- ③ throw ── 的玉の振られ量。 速度依存
- 総合補正量 (①−②+③) ── 全部足したやつ。 0 なら素直な狙いで入る
- ピボット長 (BHE) ── ①と②が相殺する飛距離
総合補正量が、 構えをどれだけズラせばいいかの目安。 ここが 0 に近ければ「ゴーストボールのまま入る」、 大きければ「その分ずらして構えろ」 ってこと。
ピボット長 (BHE) は手玉側だけの話
念のため整理しとくと、 ピボット長 (バックハンドイングリッシュの支点) は ①と②、 つまり手玉側だけ が相殺する飛距離。 throw は的玉側の話だから、 ピボットとは別に残る。 だから「ピボットポイントで構えれば squirt は消せる、 でも throw 分は別途狙いをずらす」 ── これが実戦の正しい順番。 BHE で手玉の逃げを消して、 残った throw を厚みで補正する。 上手い人が無意識にやってる二段構えはこういう構造になってる。
デモで試してほしい 3 つ
1 個目: 速度で総合補正量が動く
横撞点と厚みを入れて、 初速を 0.5 ↔ 5.0 で振る。 ③ throw と②の戻りが両方動いて、 総合補正量の数字が大きく変わるのを見てほしい。 速い球と遅い球は別の狙いだ、 が数字で出る。
2 個目: 立て角でピボットを作る
立て角を上げて②の戻りで①を相殺する。 ピボット長のところが出て、 ②の正味が 0 に近づく。 でも総合補正量は throw が残るからピッタリ 0 にはならない ── ここが「手玉側は消せても的玉側は残る」 の見え方。
3 個目: 厚みでスロウだけ動かす
横撞点を固定して厚み (cut) だけ動かす。 ③ throw が厚みで変わって、 総合補正量に効くのが分かる。 薄く切るときと厚く当てるときで的玉の振られ方が違う。
まだ近似な部分
- throw の摩擦モデルは Dr. Dave の実測フィットの形を使ってるけど、 ラシャや球のコンディションで実際の値は動く。 ここは「遅いほど効く」 の傾向を見せるのが目的。
- 総合補正量は的玉の面でざっくり足した目安で、 厳密なポケットへの入射点計算まではやってない。 あくまで「どっちにどれだけズレるか」 の体感用。
- キス・コンボ (的玉から的玉への throw 伝播) や台のコンディション差は、 このシリーズには入れない別テーマ。
逃げる (squirt)・戻る (swerve)・寄る (throw) ── エイミングを狂わせる 3 つを、 v5・v6・v7 で 1 個ずつ出して、 最後に 1 枚に重ねた。 この 3 つを分けて分かってると、 「速度・撞点・厚み」 をどう組み合わせて狙いを補正すればいいかが、 感覚じゃなくて構造で見えるようになると思う。 エイミングの核心シリーズはこれで一区切り。
参考にしてる文献
- Alciatore, D. (Dr. Dave) の throw / squirt / swerve / ピボット長の技術資料
- Shepard, R. Amateur Physics for the Amateur Pool Player
- Marlow, W. C. The Physics of Pocket Billiards (1994)
→ 総合エイミング (squirt + swerve + throw) v7 を試す