TAMARI-玉理論 · Journal · 2026-06-26
活きた台と死んだ台 ── v9 でクッションの堅さを出した
タグ: ビリヤード · 台コンディション · クッション · 反発係数 · TAMARI-玉理論
「この台クッション死んでるな」 とか「ここよく走るわ」 とか、 現場でよく言う。 同じ撞き方でも台が変われば手玉の動きが変わる。 v9 はその 台コンディション ── クッションの堅さ・活き を物理にした回。 今回も先に文献を調べてから作った。 調べたら、 自分の思い込みが1つ直った。
クッションの「堅さ」 = 反発係数 (COR)
クッションがよく跳ねるか死んでるかは、 物理でいうと 反発係数 (COR) 。 1 に近いほどエネルギーを返す=活きた (堅い) クッション、 小さいほど死んだクッション。 v9 では「クッションの堅さ」 スライダーでこれを動かせるようにした。
活きた台だと手玉は反射後もよく走るし、 死んだ台だと跳ね返りで勢いを失う。 当たり前なんだけど、 これがバンクやポジションの距離感を狂わせる元になる。
→ 台コンディション (クッションの堅さ) v9 を試す
速い球ほどクッションは「効率が落ちる」
ここが今回の物理のキモ。 COR は速度で変わる 。
クッションのゴムは、 速い球が来ると潰れきって剛体じゃなくなる。 そうなるとエネルギーを返しきれず、 跳ね返りの効率 (COR) が落ちる。 文献 (Mathavan 2010) によると、 クッションを剛体とみなせる限界はだいたい 法線方向で 2.5 m/s 。 これを超えると COR が落ち始める。
デモでは「実効 COR (この速度)」 として、 設定した堅さから速度で下がった分を出してる。 ゆっくりなら設定通り、 速いと下がる。
ちなみにバンクの角度でいうと、 速度には2つの効果がある。 ひとつは 速いほど跳ね返り角が短くなる (レール・スローバック) 、 もうひとつは 速いほど効率が落ちて伸びる 。 この2つが綱引きしてて、 総じて「速い方が跳ねが短く、 かつ台ごとのバラつきが小さい」 。 だからプロがバンクをそこそこの速さで撞くのは、 台コンディションのブレを抑える意味もある。
思い込みを1つ直した ── クッションの高さ
実は作る前、 「クッションが球に当たる高さって球の中心よりだいぶ上 (1.4R くらい) だろう」 と思ってた。 でも調べたら違った。
WPA (世界プール協会) の規格だと、 クッションの鼻 (球が当たる点) の高さは ボール直径の 63.5% 。 計算すると 球の中心より上 約0.27R (半径の3割弱) でしかない。 思ったよりずっと低い。
この高さが「低いと跳ねが短くキビキビ、 高いと球が布に押し込まれて軌道が伸びる」 を決めてる。 思い込みのまま 1.4R で作ってたら数字がぜんぶズレてた。 先に裏取りして正解だった 。
v9 で出したもの
- 「クッションの堅さ (COR)」 スライダー … 死んだ ↔ 活きた
- 数値バーに クッションの堅さ (base COR) と 実効 COR (この速度) を併記。 速いと実効 COR が下がるのが見える。
- 手玉がクッションに当たる設定 (厚み+速度+反射回数) にして撞くと、 堅さで反射後の走りが変わる。
クッション反射は v3/v4 から入ってたけど、 そこに「堅さ」 と「速度依存」 を足したのが v9。 これまでのコンビ (連続球) もそのまま残してある。
デモで試してほしい 2 つ
1 個目: 堅さを振る
手玉がクッションに当たる設定にして、 「クッションの堅さ」 を死んだ ↔ 活きたで振る。 反射後の手玉の走りが変わるのを見てほしい。
2 個目: 速度で実効 COR が下がる
堅さを固定して、 初速を上げる。 「実効 COR (この速度)」 が base から下がっていくのが数値で見える。 2.5 m/s あたりから効いてくる。
今回の作り方について
クッションは速度・回転・堅さが複雑に絡むので、 いいかげんに作ると嘘になる。 だから先に Dr. Dave の資料・Mathavan の論文・WPA 規格を直接読んで裏取りしてから実装した。 クッション高さの思い込み (1.4R → 中心上0.27R) もこれで直せた。 詳しい調査と実装の記録は別途まとめてある。
台が変われば球も変わる ── その「変わり方」 を堅さと速度で動かして見えるようにしたのが v9。
参考にしてる文献
- Alciatore, D. (Dr. Dave) の bank/kick・クッション効果の資料
- Mathavan, Jackson & Parkin (2010) クッション衝突の解析
- WPA (世界プール協会) 機材規格 (クッション鼻の高さ)
- pooltool (物理エンジン) のドキュメント
→ 台コンディション (クッションの堅さ) v9 を試す