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ホームページ制作の契約書・発注書で見る項目 ─ 著作権・保守・解約

契約書を交わさずに進むホームページ制作は珍しくありません。作る範囲や修正回数、著作権、ドメインの名義、解約の条件など、書面で確認しておくと後で困りにくい10項目をまとめました。

1枚の書面を挟んで、項目を一つずつ確かめている事業主と制作担当者

「契約書は交わしましたか」。ホームページ制作の相談を受けたとき、私がよく聞く質問です。

返ってくる答えで多いのは「見積書はもらいました」「メールでやり取りしただけです」。小さな会社のサイト制作では、これがごく普通に起きています。

この記事では、制作側の人間として、契約書や発注書のどこを見ておくと後で困りにくいかを項目ごとに説明します。難しい言葉は使わず、「何が書いてあれば安心か」だけに絞りました。

契約書が無いまま進む案件は珍しくない

数十万円規模のホームページ制作では、契約書を交わさず、見積書と「お願いします」のメールだけで作業が始まることがよくあります。

責める話ではありません。小さな案件ほど、書面を整えること自体が手間だからです。実際、そのまま公開まで何事もなく終わる案件もたくさんあります。

書面が薄くなりやすい理由

  • 金額が数十万円で、契約書を作るほどでもないと双方が感じる
  • 知り合いや取引先の紹介で、信頼関係が先にある
  • 早く公開したいので、書面のやり取りに時間を使いたくない

困るのは「途中で何かが変わったとき」

書面が薄くても、最初に話したとおりに進めば問題は起きません。困るのは、途中で前提が変わったときです。

  • 担当者が交代して、引き継ぎで話が食い違った
  • 「ここも直したい」が増えて、追加料金の話になった
  • 公開が延びて、支払いのタイミングが分からなくなった
  • 数年後に別の会社へ移そうとしたら、データを渡してもらえなかった

こうした場面で頼りになるのは、記憶ではなく書面です。実際にどんな揉め方をするかは、ホームページ制作の失敗事例6選にまとめています。

空のままの書類ファイルの横で、長いメールのやり取りを画面でたどっている事業主
契約書のファイルは空でも、やり取りだけは積み上がっていきます

契約書・発注書で見る10項目 早見表

見る場所は10か所です。専門用語を使わずに言い換えると、「何を・何回まで・いつまでに・誰のものとして」作るのか、という話に集約されます。

10項目と、書いていないと起きること

見る項目書いてあるか確かめること書いていないと起きやすいこと
1. 作る範囲ページ数、スマホ対応、CMS の有無「それは別料金です」の押し問答
2. 修正の回数デザイン修正は何回まで無料か何度も直したうえに追加請求
3. 納品の形データ一式か、公開作業まで含むか公開の作業が宙に浮く
4. 検収確認の期限と、合格の伝え方いつ完成したのかが決まらない
5. 支払いの時期何回に分けるか、いつまでに払うか途中で止まったときの精算で揉める
6. 著作権制作物の権利が誰に、いつ移るか自社サイトなのに自由に直せない
7. データの引き渡しサイトのデータやログイン情報をもらえるか乗り換えのときに一から作り直し
8. ドメイン・サーバーの名義契約者名が自社になっているかサイトもメールも止められてしまう
9. 保守の中身月額に何が含まれ、何が別料金か「更新は別料金でした」
10. 解約の条件予告の期間、違約金、解約後のデータ辞めたいのに辞められない

CMS(お知らせなどを自分で更新できる仕組み)のように、言葉の意味が人によってずれやすい項目は、書面の言葉だけで安心せず、口頭でも一度すり合わせておくと確実です。

全部そろっていなくても構いません

10項目すべてが書かれた契約書は、小さな案件ではあまり多くありません。優先順位を付けるなら、次の3つだけでも書面に残しておくと後で困りにくくなります。

  • 作る範囲(項目 1)
  • 著作権とデータの引き渡し(項目 6・7)
  • 解約の条件(項目 10)

この3つは、揉めたときにお金では取り返しにくい部分だからです。残りの項目は、後からメールで補うこともできます。

作る範囲・修正回数・納品の形を数字で書く

揉め事の入口でいちばん多いのは、この3つが言葉のままで、数字になっていないことです。

ページ数と、含まれる作業

「ホームページ一式」ではなく、何ページ分なのかを数字で書いてもらうと、後の話が早くなります。

  • トップページと下層ページが、それぞれ何ページか
  • スマホ対応は含むか(含むのが普通ですが、書いてあるほうが安全です)
  • お知らせを自分で更新する仕組み(CMS)は含むか
  • 原稿と写真は、どちらが用意するか
  • 問い合わせフォーム、地図、SNS との連携は含むか

この並びは見積書の読み方とほぼ同じです。項目ごとの意味はホームページ制作の見積書の見方で詳しく説明しています。

修正は何回まで無料か

デザインの修正回数は、書いていないと必ずどこかで話題になります。2〜3回までを無料とし、それ以降は別料金、という書き方が一般的です。

回数そのものより、何を1回と数えるかが決まっているほうが大事です。

書き方決まっていること起きやすいこと
修正回数の記載なし何も決まっていない延々と直し続ける、または途中で追加請求
「修正は3回まで」上限の回数1回の数え方で食い違う
「デザイン案の修正は3回まで。まとめて戻した分を1回と数える」回数と数え方ほとんど起きない

納品の形

「納品」という言葉は、会社によって指すものが違います。ここも書き分けてもらうと安心です。

  • 公開の作業まで含むのか、データを渡すところまでか
  • 渡されるのは何か(サイトのデータ、デザインのデータ、写真の元データ)
  • サーバーや CMS のログイン情報は渡されるか

とくにログイン情報は、渡す約束が無いまま公開まで進むことがあります。自社で開けるかどうかは、ホームページ制作会社の乗り換え方でも最初に確認する項目として挙げています。

複数のデザイン案を机に広げ、直してほしい点を付箋でまとめて伝えている場面
直したい点をまとめて戻すと、修正の回数を無駄に使わずに済みます

検収と支払い ─ 「いつ終わったことになるか」を決める

「完成」がいつなのかを決めておくと、支払いのタイミングも自然に決まります。逆にここが曖昧だと、最後の最後で気まずくなります。

検収の期限

検収とは、出来上がったものを確認して「これでよい」と伝えることです。ここに期限が入っていると、双方が助かります。

  • 納品から1〜2週間程度で区切っているものが多い
  • 期限内に連絡が無ければ合格とみなす、という書き方もよくある
  • 直してほしい点は、口頭ではなくまとめて書面かメールで伝える

期限が無いと、制作側は「終わったのか分からない」まま次の案件に進み、依頼側は「まだ直してもらえる」と思ったまま時間が経ちます。この行き違いが、音信不通の入口になることがあります。

支払いの時期と回数

支払いを何回に分けるかは、案件の大きさで変わります。分け方と、それぞれの期日が書いてあるかを見てください。

分け方よくある割合向いている場面
完了後に一括全額金額が小さい、期間の短い案件
着手時と完了時の2回半分ずつ一般的な会社サイト
着手・中間・完了の3回3分の1ずつ金額が大きい、期間の長い案件

そのうえで、次の3点が書いてあるかを確認しておくと安心です。

  • 支払期日が「請求書の発行から◯日以内」のように決まっているか
  • 途中で中止になったときの精算の考え方が書いてあるか
  • 追加料金が出るときは、作業に入る前に見積もりを出す約束になっているか

3つ目は地味ですが、いちばん効きます。「作業の前に金額を出す」とだけ決めておけば、請求書を見て驚く場面がほぼ無くなります。

著作権・データ・ドメインの名義 ─ 公開後に効いてくる3つ

この3つは制作中には気になりません。効いてくるのは、数年後に制作会社を替えたくなったときです。

著作権は「誰のものか」と「いつ移るか」

制作物の著作権は、何も決めなければ作った側に残る、という考え方が一般的です。だから契約書では「制作費の支払いが完了した時点で依頼側に移る」といった書き方をすることが多くなります。

確認しておくと安心なのは、次の2点です。

  • 権利そのものが移るのか、使ってよいという許可(利用許諾)なのか
  • 移るとしたら、いつ移るのか(支払いの完了時が多い)

権利が制作会社に残ったままだと、自社のサイトでも他社で自由に作り替えられないことがあります。 ここは金額の交渉より優先して確かめておきたい部分です。

素材の権利は別に考える

サイトの中で使う写真・イラスト・書体には、それぞれ別の権利があります。制作物の著作権が移っても、素材を使ってよい範囲まで一緒に移るとは限りません。

  • 有料の写真素材は、どこまで使ってよい契約になっているか
  • 書体(フォント)は、サイトで使い続けるのに追加の契約が要るか
  • 撮影した写真を、チラシや名刺にも使ってよいか

サイト以外にも使う予定があるなら、先に伝えておくと話が早く済みます。後から聞くと、素材を買い直すことになる場合があります。

ドメインとサーバーの名義

名義は「誰が管理しているか」ではなく「誰の契約か」の話です。制作会社が代理で手続きをしても、契約者名が自社になっていれば問題ありません。

  • ドメインの契約者名(登録者名)が自社になっているか
  • サーバーの契約も同じになっているか
  • 管理画面のログイン情報を、自社でも持っているか

ドメインは住所にあたるもので、失うとサイトだけでなくメールも止まります。仕組みと名義の確認方法はドメインとサーバーとはでやさしく説明しています。

サイトのデータの入ったファイルと鍵を、自分の手元に持っている事業主
データと名義が自社にあるかどうかは、数年後に効いてきます

保守の中身と、解約の条件・違約金

月額が発生する契約は、「何が含まれるか」と「どうすれば辞められるか」の2つを必ず見ます。

保守費に何が含まれるか

保守の月額は 5,000〜50,000円と幅があります。幅が大きいのは、含まれる作業が会社によって違うためです。

含まれることが多い作業別料金になりやすい作業
サーバー・ドメインの管理文章や写真の差し替え
CMS や周辺の仕組みの更新ページの追加
バックアップ(控えの保存)デザインの変更
不具合が起きたときの一次対応新しい機能の追加

「更新作業込み」と書いてあっても、月に何回までか、どこまでを1回と数えるかで中身が変わります。月額の考え方はホームページの維持費・管理費で細かく説明しています。

解約の条件

辞めるときの決まりは、契約する前にいちばん読み飛ばされ、辞めるときにいちばん効く部分です。

  • 最低契約期間はあるか、自動更新になっているか
  • 解約はいつまでに、どういう方法(書面かメールか)で伝えるか
  • 途中で解約したとき、違約金や残りの期間分の請求はあるか
  • 解約した後、サイトのデータをもらえるか、削除されるか

最後の1つが抜けていると、辞めた途端にサイトが消えることがあります。初期費用が安い月額型で起きやすい形は、月額0円・格安ホームページのカラクリに書いています。

お客様の情報の扱い

問い合わせフォームや会員機能があるサイトでは、そこに入ってくる情報をどう扱うかも決めておくと安心です。

  • 制作会社がその情報を見られる状態になっているか
  • 契約が終わった後、預かった情報をどうするか
  • 社外に出さない約束(秘密保持)が契約に入っているか

個人の情報を預かるサイトなら、この一文があるだけで、社内でも取引先にも説明しやすくなります。

「一式」だけの発注書が危ない理由と、記録の残し方

「一式」が危ないのは金額が高いからではなく、含まれる作業が決まっていないからです。

「一式」は金額ではなく範囲の問題

「ホームページ制作一式 ◯◯万円」と書かれた発注書は、一見すると分かりやすく見えます。ところが後から「スマホ対応は別でした」「写真はお客様に用意していただく前提でした」と言われたとき、書面のどこにも否定する材料がありません。

内訳の書き方でどれだけ変わるかは、見積書の見方の表が参考になります。発注書も同じで、範囲・回数・期限の3つが数字で入っているかが分かれ目です。

口約束はその場で消えていく

打ち合わせで「それも入れておきますね」と言われた内容は、記録に残さないと無かったことになりがちです。相手が不誠実なわけではなく、単純に忘れます。

私自身、制作側として同じことをしない自信はありません。だから、決まったことはその日のうちに文字にして送るようにしています。

打ち合わせの後にメールを1通送る

いちばん簡単で、いちばん効く方法です。打ち合わせが終わったら、決まったことを箇条書きにしてメールで送ります。

  1. 決まったこと(範囲・回数・期日・金額)を箇条書きにする
  2. 「認識に違いがあればご指摘ください」と一文添えて送る
  3. 相手から「そのとおりです」と返ってきたら、そのメールを保存しておく

この3つのやり取りが、契約書に近い役目を果たします。揉めたときに効くのは、記憶ではなく日付の入った記録です。

  • 電話で決まったことも、その日のうちにメールへ書き写す
  • チャットで進めている場合は、区切りごとにメールにまとめ直す
  • 見積書・発注書・請求書は、PDF のまま1か所に保存しておく
打ち合わせの直後に、決まったことを箇条書きにしてメールに書き写している事業主
その日のうちに1通送っておくと、後から「言った・言わない」になりません

まとめ ─ 契約前のチェックリスト

書面を前にしたら、次の6点を確認すると大きく外しません。

  • 作る範囲が数字で書いてあるか(ページ数・スマホ対応・CMS・原稿と写真の担当)
  • 修正の回数と、1回の数え方が決まっているか
  • 検収の期限と、支払いの時期・回数が書いてあるか
  • 著作権がいつ誰に移るか、データとログイン情報を受け取れるか
  • ドメインとサーバーの契約者名が自社になっているか
  • 解約の予告期間・違約金・解約後のデータの扱いが書いてあるか

書面が薄いまま進んでしまった場合でも、今からメールでやり取りを残しておけば状況は変わります。「言った・言わない」を避けるだけで、防げる揉め事はかなりあります。

LIT STUDIO では、HP 制作(15万円〜)でも、作る範囲・修正回数・著作権・データの引き渡しを書面に残してから着手しています。今の契約で気になる点があれば、お問い合わせから気軽にご相談ください。

なお、この記事は契約書を読むときの目の付けどころをまとめたもので、法律の助言ではありません。契約の中身で迷ったら、弁護士や行政書士など専門家に相談してください。

よくある質問

Q.ホームページ制作で契約書は必ず必要ですか?
金額が小さい案件では、見積書と発注書、メールのやり取りだけで進むことも珍しくありません。ただし「作る範囲」「著作権とデータの引き渡し」「解約の条件」の3つは、どこかに書面で残しておくと後で困りにくくなります。
Q.著作権は契約書にどう書いてあると安心ですか?
「制作費の支払いが完了した時点で依頼側に移る」のように、いつ誰に移るかが書いてあると分かりやすいです。権利そのものが移るのか、使ってよいという許可なのかも合わせて確認しておくと安心です。
Q.「ホームページ制作一式」の発注書でも問題ありませんか?
金額が問題なのではなく、含まれる作業が決まっていないことが問題になります。ページ数・スマホ対応・CMS・原稿と写真の担当・修正回数を、別紙でよいので数字で書いてもらうと食い違いが減ります。
Q.契約書を交わしていない場合、何を残しておけばよいですか?
打ち合わせで決まったことを箇条書きにしてメールで送り、相手から了解の返信をもらって保存しておく方法があります。日付の入った記録が残るので、後から話し合うときの土台になります。

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